先生と迷い猫

ネコと初老の男性との交流を描いたヒューマンドラマ

「先生と迷い猫」は、深川栄洋監督のイッセー尾形主演の邦画ヒューマン・ドラマの作品です。

ドラマの元になっているのは実際に起きた埼玉県での地域猫失踪事件で、それまで特に地域の人達と交流を持って来なかった男性がこの事件を通して多くの人達と心をかよわせていくということがドラマの主題になっています。

主演のイッセー尾形はもとより、ほかにも助演陣として染谷将太や北乃きい、もたいまさこ、岸田加世子といった実力俳優が配されていることが映画の質を高めていることが特徴です。

あらすじを簡単に説明すると、主人公である森衣恭一(役:イッセー尾形)は妻に先立たれてしまって以来自宅で淡々とした日々を送っています。

妻が生前にかわいがっていたのが野良猫のミイでしたが、妻が生前の頃は恭一はネコが嫌いで自宅に来るたび追い払っています。

しかし妻が亡くなってからもミイは何度も訪れて来ては、亡くなった妻の仏壇の上に座って過ごします。

そんなミイがある日突然に姿を消してしまうことになり、それをきっかけに恭一も周囲と関わりを持ちミイを探すことに本気を出すことになります。

そんなミイ探しの旅が思わぬ結果を呼び寄せる、というのがこの映画の主な流れです。

原作を読んで涙が止まらないということも

この「先生と迷い猫」というお話はもともとは「迷子のミーちゃん」という小説が原作となっている作品です。

原作である小説ではより細かく主人公や周囲の人たちの心理が細かく描かれており、地域猫という存在がどれだけ多くの人の心を癒やしてきたかということを教えてくれます。

映画ももちろん素晴らしい出来なのですが、それに合わせて小説も読んでみるようにすることによってよりネコと人間の生活における密着度がわかるとして評判です。

そういえば「地域猫」という言葉が一般的に定着されるようになってきたのもこの映画が公開された頃と時期を一緒にしており、普段は自分でペットとして飼育をすることが難しい人たちが地域全体としてそのネコの面倒を見ていくというスタイルを考え始めた頃なのではないかと思ったりします。

ちなみにこの「先生と迷い猫」で登場するミーちゃん役としては、本当に一匹のネコがこなしてくれたということもまた隠れた鑑賞ポイントになっています。

こうした動物が多く登場する映画においては通常似たような犬やネコを4~5匹用意してのぞむというのが一般的なのですが、「先生と迷い猫」では一匹のネコだけが最後まで自分役をこなしてくれたんだといいます。

迷子のミーちゃんが起こす周囲の人達への機微

ネコを飼ったことがある人ならわかると思いますが、ネコという動物は大変気まぐれで突然人間の意図していなかった行動をとってくるということがあります。

地域猫として飼育されていたという事実もあるミーちゃんはまさにそんな存在で、たくさんの地域の人に可愛がられながらも自分で行動をどうするかを決めるという意志はきちんと持っていたのではないかと思います。

この「先生と迷い猫」を見ていて感じるのはそんなネコ特有の気ままな性格と、それでも地域のみんなが協力してその生命を守ろうとしていくという団結感です。

ネコと長く暮らしているといつしか「この子、本当は全部わかってるんじゃないか?」といった気持ちになることもよくあるわけですが、そんな気持ちを自然な形で表現してくれているのが「先生と迷い猫」という映画なのではないかと思ったりします。